キューブハウス美術学院
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【木炭デッサン批評会】芸大美大受験科


 
パジャント石膏像木炭デッサン9時間

  1. 「レベルとしては芸大に入れるかも知れないが、本番で落ちる可能性もある。入試のデッサンは200点満点。解りやすく点数を付けると100点満点中85点だね」
  2. 「頭と衣の細部が形として描けていない。時間が無かったと言うより、全体の構造を把握するため試行錯誤の痕跡を残して終わっている」
  3. 「背景の色も黒過ぎて壁としての抵抗感が無いため、空間がもやーと柔らか過ぎ」
  4. 「パジャント像全体の構造をハッキリ出すため、柔らかいタッチで木炭をあとから被せているのは描法の経過として解る」
  5. 「細部まで踏み込む前に制限時間が来たようだね」
  6. 「木炭が柔らか過ぎるように見えるのは伊研の柳木炭だからかな。ニュートンの細い木炭で描いた方が形を彫り起こしやすい。どの木炭を普段使用してるの?」
  7. 「顔が似ているようで、似ていない。もっと細部まで正確に描くステップを考えて身に付けた方がいいね」
  8. 「木炭の調子から、2年間くらい木炭デッサンを学んだ人という事が解る」
  9. 「パジャント像の肩幅はもう少し狭い。両肩の切れ目を少し縮めるべきで、1分で直す事ができる。それに気づいて修正すれば88点」
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ブルータス木炭デッサン12時間

  1. 「似てないじゃないか?あごの所がもっと太っている。頭のまとめ方はいいが、頭髪が単純過ぎる。首が右側に回り込むトーンの明るさと、ひねった感じが弱い」
  2. 「ニュートンの細い柳木炭を使用している事が解る。右側の壁の描き込みがあまい。壁の抵抗感がないため、空間の出し方で損をしている」
  3. 「胸像の切り口の下と壁側の切り口の形としての抵抗感無い」「本格的に描き始めて1年半目だね。大体だけどね」
  4. 「胸像の下の台の正面の抵抗感が無い。影を正確な調子で描けばもっと抵抗感が出るはず」
  5. 「入試レベルは76点。本番でこのぐらい描けば入れる場合もあるが、ギリギリだね。私立(美大)なら入れる」
  6. 「形の意味が解り始めているね。本人は形としての抵抗感をハッキリ認識していないかも知れないが、ボリュームにセメント製のような質感が表れ始めている。この描き方や形としての手ごたえがでてくれば、空間の中で質感の強弱を付けられるようになるはず」
  7. 「ローマにあるブルータス像原型(ミケランジェロ作イタリア・フィレンツェ・バルジェロ美術館蔵)のような質感が出ているが、顔は肩の所より少しトーンを落とすぐらいがちょうどいい。この顔のトーンでは後ろへ下がり過ぎ。その意味がハッキリ解るようであれば、さらに上手くなると思えるが、これで限界かな?」
  8. 「空間の中での形については、いつまでたっても認識できない人たちの方が多いので、このように描けるようになったという事は、上達へのきっかけをつかみ始めている。油彩画の描き方も形や位置関係を追求するようになればいんだけどね」

     
 
アグリッパ鉛筆デッサン9時間

  1. 「石膏像の土台と左下テーブル面が描けていない。もう少し踏み込める時間があれば、欠点無し。72点、惜しいと思える」
  2. 「額にたん瘤のような膨れ個所がある。見えている通りに描いては駄目で、膨らんで見える個所を抑えた方が良い」
  3. 「左側の肩の影も自然な影になるように微調整が必要」
  4. 「陰の質感が粗い。斑を無くして頭部と同じ質感にすべき。特に顎下の膨らみが描けていない」
  5. 「光源が2つあり、陰影の異なる濃さと照射角を識別しながら描けば、もう少しからりとした空間になるはず」
  6. 「小さく縮小した場合の全体の明度バランスが良いので、直すべき欠点がハッキリ見えたなら、この角度からもう一度描いてみるべき」
  7. 「立体感は捉えているが、80点の観察力じゃないね。目鼻口耳顎下の存在感が描けていないし、特徴を捉えていない」


 
アグリッパ鉛筆デッサン6時間
  1. MO画用紙上で擦筆は使用せず、6Bで輪郭線と下地トーンを描き、練りゴムで叩きながら明度を調整。
    その上からHB~4Hまでのハードな鉛筆で塗りつぶし、微妙なトーンを整える描法。
  2. アグリッパの特徴を捉えているが、首の円筒形と胸の抵抗感が描けていない。顔の比例として顎が少し小さいので75点。

 ラボルト鉛筆デッサン9時間

 1.テーブルの左側パースがゆがんでいる。耳の穴が描けていない、顎に膨らみが無い等、些細な事だが重要。
 2.石膏像としての材質感が少し異なり、やや鉛の質感ぎみ。それらを克服すればさらに良くなると思えるが、そこまで美意識が成長していないかも知れない。
 3.点数はあくまで目安としてあり、90点。
 4.右上の壁の空間が出ていない。べたにならないように擦筆で磨り潰し、わずかにトーンの変化を作るべき。



 
アリアス鉛筆デッサン9時間
  1. 構図が良くない。頭の上1cm開ける。
  2. 構図が窮屈。せっかく描いても動きが取れず空間に広がりが無い。73点。
  3. 髪のハイトーンが均一なため、少し飛んで見える。微妙な調子を付けるべき。
  4. アリアスが初めての場合は、頭髪が難しい。頭髪の複雑な凸凹の質感が出るとなお良くなる。
  5. 初回では難し過ぎる石膏像なので、期間をおいて何回も練習すべき。
  6. アリアスの表情は含みのあるにんまり顔ではなく、もっとつつましい顔付きをしている。




                        


芸大美大系と国公立教育学部美術学科】
  1. 美大入試に石膏像木炭デッサンが出題する事が多い。鉛筆デッサンの場合は、リンゴとレモン・布・レンガ・ブロックのある静物、多摩美術大学などは、左手の鉛筆デッサンが出題する傾向がある。石膏像は全教室分同じ石膏像を何十体も揃えるほど所持していないので、同一石膏像で出題する事は無理。出題傾向としては、ブルータス、ヘルメス、マルス、アリアス、パジャント、モリエール、アマゾン、アグリッパ、ビーナス、アバタのビーナスなどの順。
  2. 在学生によるアルバイトを利用して、パイプ椅子に座ったコスチューム木炭デッサンも傾向として多く、最も簡単で費用がかからない方法の一つ。
  3. 木炭デッサンは、初心者であれば、どのような人でもかなり才能のある人でも、半年ぐらいは煤けたデッサンになり、形を正確に調子をくもらせないように、テクニックが身につくようになるまでには、毎日の訓練で1年以上かかる。
  4. デッサンについては、才能があったとしても点数制のため、構図が悪かったり形が正確に描けていなければ、個人的な才能や個性にまで点数を付けない。習い始めて最初の1年は、先生などの言っている意味が、はっきりと認知できない。言葉では理解しても、腕が思いどうりについて行かず、上達しづらいため。
  5. 石膏像デッサンが同じように見え、抵抗を感じる人はデッサンが上達しない。描画・素描より何かを作る方に伸びるかも知れない。
  6. 東京芸大油絵科専攻の入試では、「背景を空想画にして受験票に貼ってある小さな顔写真を参考に自画像を描く」出題内容の時もあった。他、「ケント紙を巻いた筒3本を教卓の上に乗せ、それを油彩で描く」など。東京芸大の場合は、モチーフやテーマを前年度と同じにして出題する事がなく、毎年予想が付かないように工夫している。
  7. 「1年間の特訓でもなぜ落ちやすいか」という事を考えると、試験会場で場慣れしていないという事と席順の問題がある。くじ引きで当日決定される席の位置が最良で、目の前にモチーフがあり、巧く描ければ、1年で入れる場合もある。
  8. 実技点数というのは、観察力を比較して見るためのもので、人や物を正確に、空間や調子を適切に表現しているかに点数が付けられる。個性というのは非観察力の部分で癖とあまりかわりない。従って個性にこだわる人は能力が伸びづらく、癖があり過ぎるというデメリットのために、落ちやすい。
  9. 試験会場の受験者数は各教室両側に20人から25人、1室40人~50人で、その中で1番上手く描けたと思っても落ちる可能性がある。予備校で特訓を受けた浪人生がいっぱいいる教室もあるので、地方から来た高卒の素人だけ偶然集まった教室と異なるケースが当然の事ながら自然発生する。
  10. 高校1年から夜間部に毎日通い、試験がセンター試験で各70~80点の受験生が本番で上手く描け、絶対入ると思っていた生徒が、私立美大でさえ落ちている。本人の試験本番の状況説明が不十分で正確でなかったためか、そういう場合もあるので合格発表まで毎年解らない。
  11. 「入学試験時は、どのような方法で実技点数を付けるか」。デッサンの場合は、教室一面にパイプイーゼルの高中低を3段に分け、カルトンを並べて作品をクリップで固定する。モチーフが同じなため、はっきり違いが判り、最上段列左から巧い順にカルトンごと作品が並べ換えられる。中段は中くらいのレベルで、下段は描き込みがゆるく観察力の無い初心者作品。中段下段は成績が最優秀でも入れる見込みがなく、下段はほとんど無視される。3名以上の教授たちが審査に立ち会い、異議があれば討議しながら1人の賛同者がいれば上段中段下段の上手い順列、左上からの配列の入れ換えが行われる。試験作品の配列後、助手が教授たちに確認をしてから5点~2点差で点数を書き込む。油彩画、日本画、彫刻、デザイン平面構成もその方法。 このような採点方法が、ヨーロッパのアカデミーから何百年も伝統的に受け継がれている。アメリカでもその採点方法は、現在のところ同じ。
  12. 入学してから数年後、あの人がなぜ合格する事が出来たのか、信じられないレベルの人たちも1割から2割。試験本番で席順が良く、偶然、最良のベスト作品が描けた人で、入ってからは平均レベルが最下位の方となり、在学維持も難しいまで実技レベルが下がる画学生らが、当然の事ながら何十人もいる。 それで創作欲の持続的な維持と自己調整や探求、能力の成長のための工夫が必要となる。それらの事々は、様々な条件に左右されるので思い通りには行かず、能力の限界を何年も押し続ける事になるが、若い時はどの分野でも同じで耐えなければならない。そのための持続的創造的工夫が必要。同じ分野で誰にも無い自分の長所を見つけ、伸ばす事が案外難しい。
                
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