1. 鮫の感覚器官と能力

    サメは最初、音によって獲物の位置を察知する。海水中の変則的な波動や生態電流の微かな違いを感知し、数キロメートル先から襲いに来る。しかし、船のエンジンやモーターのような機械音には全く無関心で反応しない。サメは口の上から鼻の下が敏感で、思いっきり鼻先を拳で殴ったり、棒で突くと逃げる場合が多い。しかし、残念ながら更に凶暴になって襲ってくる事もあるので、油断はできない。急所は、サメの種類によって多少位置が異なっているが、鼻の両穴の内側から鼻先10数センチのところにあるロレンチニ瓶(ロレンチーニ氏の瓶嚢)と言われる1mm前後の小さな孔の集合箇所で、そこを強く突くと混乱して逃げる。

    ホホジロザメの場合は、鼻先と両サイドの鼻の穴の中間内側に多数の小孔の集合箇所が左右にある。その辺を撫でるとしばらくの間しびれ、海面を仰向けに泳ぎ時々痙攣する。ロレンチニ瓶はサメ・エイなどにもある。また、一度噛み付いてから獲物を放す習性があり、その間に助けられた例も多い。サメは低周波音と変則音に敏感なため、沖合いで船底・台・テーブル・船の縁などを不規則に、或いはリズムをつけて連続して叩いたり、船から飛び込み、背泳やクロール、特にバチャバチャした遊泳をすると直ぐ察知される。水中音速は1.4km/秒で、十数キロ範囲内であれば10秒以内に感知し、1時間以内に接近する。近くにいればいるほど早く来る。海面では、立ち泳ぎ・横泳ぎ・平泳ぎの内、一定の泳ぎ方で絶対に変則的な動きをしてはいけない。

    ロレンチニ器官には、生物が発する微かな生態電流や地球の磁気などを感知し、位置や方角を捉える機能がある。また、地球上の磁場や電界によって、海流・海中生物・金属等も認知する。この特殊な器官によって、暗く見えない夜の海の中でも、遠方から獲物を察知し、正確に捕らえる事ができる。サメの鼻には数種類の感覚受容器が並び、海水温度・海水成分・塩分濃度・川の位置と大きさ・汚染地帯・海底火山の場所・海底地形等も識別している。100万分の1の血液濃度や摂氏1000分の1の海水温の違い、聴覚は数十キロ、嗅覚は数百キロ、視覚は十数メートル先まで解る。

    人が襲われるケースは、ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメの順に多く、湾の入り口や河口付近、急な深みや汚染地帯などにも現れる。サメのいる海中でのオシッコは危険で、ダイビング中、サメがまだこちらを察知していない場合、サンゴ礁や岩陰に隠れ、既に発見されて接近中の場合、こちらが気づいた事をサメに手振りで知らせると、不意打ちの攻撃本能が削がれるので、戦いをあきらめ避けて通る事もある。サメが普通に泳いで威嚇していない様子であれば、逃げずに静かに通り過ぎるのを待つしかない。胸びれを下げて背中を丸め、明らかに威嚇している様子であれば、逃げないと突進して来る。海上にすぐ避難できる状況であれば逃げるべきで、そのタイミングが合わないと命取りになる場合もある。最も愚かで危険な行為は、水上スキーなど、サメの餌である。


  2. サメによる死亡事件

    1.1996年7月12日、沖縄県宮古島沖1kmの海上を無人の小型漁船が漂流していた。他の漁師が近づいて見ると、船内は血だらけで両足の無い漁師が出血多量で死んでいた。引きちぎられた両足の歯型からサメに食われた事が判明。かかった魚にサメが食い付き、急に引っ張られて海に落ちる事が多い。海から船に上がる際に両足を食われ、両腕だけで船に這い上がったか。海上で両足を咬まれ、上半身が船上に放り込まれたか。なぜ船内に上半身が残されていたか不明な事件。

    2.1982年8月29日13:40 熊本県大矢野町沖 
    ロープを流して子供3人をヨットで引っ張っていたところ、突然13才の女子が悲鳴をあげ、海中に引き込まれた。サメに腹部と内臓を食いちぎられ即死。歯の痕跡からシュモクザメと推定された。


  3. 鯨やイルカによる救助実話

    1.静岡沖で船が遭難し、房総沖まで流されていると、5~6頭のシロナガス鯨の群れに包囲され、しばらくの間頭を向けられていた。鯨がいなくなってから間もなく船が近づき、やっと救助された。

    2.海上で流されていた遭難者がいつの間にかイルカの群れに囲まれていた。その外を見ると、ホホジロザメが近づいて来ており、イルカたちはそのサメを近づけないように追い出している様子だった。

    3.夜中に海上を漂流していると、一匹のイルカが近づいて来た。その背びれにつかまり近くの浜まで引っ張ってもらい救われた実話がある。これらのイルカや鯨による救助例は既に報告されている。

(C)Junpei Satoh,2008